【院試体験談①】生物系が数理情報系に挑んだ話:研究室選び

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研究室探し(2021年4月半ば)

まずは当時の状況を整理してみます。

 

メインワークその1:解剖実習

学部4年に上がったこの時期に、生物学科人類学コース独自の必修科目として解剖実習が始まりました。人類学コースなので対象はヒトです。医学部生と合同で、3ヶ月ほどかけてヒトの手足から脳まで、実習作業と予習に多めの時間を割いて勉強することになります。

正直これが人類学コースに入った一番のモチベーションだったので非常に楽しく学べはしましたが、時期的にはかなりキツいものがありました。本来はこの実習、3年次にやるはずなのです。しかし丁度私たちが3年に上がる頃にコロナが流行り出し、その影響で実習延期を繰り返した結果、この4年の春学期というタイミングに落ち着いたわけです。

 

メインワークその2:プレ卒研

解剖実習が午前・午後に詰まっており、夜まで図書館で翌日の実習のために予習をしつつ、定期的な口頭試問や期末試験のための復習も行っていました。なのでこの合間を縫って院試のことを……というわけでもなく、さらに生物学科独自のカリキュラムとしてラボ・ローテーション(ラボロテ)がありました。内輪では「プレ卒研」と呼ばれているもので、秋学期から始まる卒業研究の前段階として異なる2つの研究室を春学期中に回り、軽めの研究体験実習を行います。生物学科は私たちのいた人類学コースと、もう一つの基礎生物学コース(動物系・植物系がこっちにまとまっている)に分かれています。3年次の講義実習はこれらのコース間で割と異なるものになりますが、4年次のプレ卒研・卒研ではコース間の壁は無くなり、人類系・動物系・植物系を問わず全ての研究室から選んで味見できるという割と自由度の高いカリキュラムになっています。

これが本来の4年春学期のメインワークになるはずでしたが、私たち人類学コースは先述の解剖実習が同時期に回ってくるというイレギュラーな状況にあったため、コース主任の先生から「特に解剖で忙しい春学期前半はその辺をよく分かってくれる人類系の研究室を選ぶこと」を推奨されました*1。それでも私はせっかくならと欲張って基礎生物側の動物発生学研究室を選び、ゼブラフィッシュ形態形成の画像解析をしていました。活動時間は午前の解剖実習前や実習後の夕方、図書館閉館後の夜中という具合です*2。自分で自分を追い詰める羽目になりましたが、やっといて損は無かったなと今でも思います。

生物学科のカリキュラムやプレ卒研の詳細に興味がある方は以下をご覧ください。

 

合間を縫って:研究室探し

さて、ようやく院試関係の話です(笑)。以前からちょくちょく研究室探しや研究室見学っぽいことはしていましたが、院としての進学先を本格的に検討するモードに入ったのは上記の解剖実習とプレ卒研が始まってからです。これらで忙しくなりそうなことは新学期前から分かっていたので「春休み終わるまでにやっておけよ」と言われても仕方ありませんね。これに関しては学習目標の一つにしていた統計力学をある程度勉強してから研究室選びに臨みたいと考えた結果、実際それに一区切りついたのが4月半ばだった、という経緯があります。

ひとまず自身の所属大学周りで「理論神経」とか「統計力学」などをキーワードに検索を進めました。出願締切や入試日程、必要科目などを整理しつつ調べたところ、概ね以下の大学院に属する研究室群が候補として引っかかりました。

  • 総合文化研究科 広域科学専攻(1研究室)
  • 新領域創成科学研究科 複雑理工学専攻(2〜3研究室)
  • 情報理工学系研究科 数理情報学専攻(3〜4研究室)

調査の段階では他の大学院もいくつか選択肢として列挙しましたが、そのうちOISTや総研大などは冬入試もあるので一旦放置し、その他に関しては自大学の院試を優先することを念頭に置きつつ実習日程との兼ね合いも考え、自身のキャパシティーを超えると判断して選択肢から外しました*3

 

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前のページに戻る [:contents] 研究室選び(2021年4月後半〜5月後半) お目当ての研究室群はウェブページ上だと面白そうに感じましたが、自分の興味とのマッチ度合いや研究室の雰囲気をもう少し詳しく知るために、主に以下の2つを行いました。 論文読み 研究室が出している論文はウェブページの研究紹介など以上に具体的な研究内容が成文化されているので、とりあえずGW中に読めそうなものを1本だけでも読んでみることにしました。「実際に配属されたらこんな感じの論文書くのかな」とか想像してみると面白いかもしれません。先生の著書を1冊読むというのもこれに近いと思います。 研究室訪問 この時期には専攻説明会や研究室見学会が集中的に開催されるのでそれに参加するのも良いですし、個人的に直接アポを取って現地に赴いたりするとさらに良いかなと思います*4。これもやっている人は多そうなので今更書く必要もないでしょうが、一応自分が先生や先輩方に質問した中でその後の研究室選びの参考になったと感じるのは主に以下の事項です。 学生視点での研究室の雰囲気、風通しの良さ メンバーのバックグラウンド 他のキャンパスに行く用事はあり得るか 英語できないと詰むか 研究テーマ設定における教員の意思と学生の意思の比率 研究室ミーティングの様子やコアタイムの存在 研究における具体的な作業*5 研究室の専門的基礎として学んでおくべき分野 分野的に近い他の研究室との違いは何か 特に最後の質問を聞いた時には割と詳細に教えてもらえることもありました。分野的に近いところをやっている先生方はお互いの研究もよく知っている可能性があるので、自身が候補として検討している研究室群については具体的に名前を出して聞いてみる価値があると思います。 志望研究室の決定 これらの情報を総合していく中で、広域科学専攻や複雑理工学専攻よりも数理情報学専攻にある研究室群の方が合っていそうだと感じるようになりました。研究室としての方向性もそうですが、専攻としてのディシプリンも、学部での専門からあえて遠いところにある専門的な数理を基礎から深めたいという自身の意志にマッチしていたと感じます。GW明けに数理情報学専攻の中でも特に気になっていた研究室に現地訪問した結果、直感的に「ここだ!」となりました。院試出願開始が6月1日だったので、その僅か2週間ほど前のことです。 もちろん、この段階でもまだ迷う人もいるかもしれません。そもそも(所属学部学科の上の大学院ならともかく)まだ本格的にその分野の研究をしているわけでもないのにそんな選択をしていいのかという不安もありそうですが、そこはある程度直感に頼って決め打たざるを得ない気がします*6。第一希望の研究室に通るとは限らず、一方で修士の途中や博士進学で研究室を変えられる可能性もあるので、悩み過ぎることなく思い切って目標を決める方が精神的にも良い方向に向かうのではと個人的に思います。 今回はここまで。次回は院試出願について書きます。 はじめに戻る

*1:後輩たちの代にはこの問題が解消されるそうです。天晴れ。

*2:ゼブラフィッシュの交配準備を夜にやって翌日の午前中に交配→受精卵に蛍光物質注入というスケジュールだったので、上手いこと解剖実習の時間とは噛み合っていました。

*3:何やかんやで自大学の方が大学としての勝手も分かってるし、現地での試験やその後の生活のために大規模な移動をする必要もなさそうだし楽だろうとも感じていました。本当に余力がある人や自身の興味関心に限りなく近い理想解的研究室を追い求めている人は、もう少し視野を広げて多くの選択肢に当たっているかもしれません。

*4:「人を集める研究室見学会などよりも個人的な研究室訪問の方がありのままの雰囲気を感じ取れて良い」という考え方もあったので私は後者を重視しましたが、実際問題として見学会の時だけ露骨に着飾るようなところがあるんでしょうかね……?

*5:理論系なら紙とペンの解析か数値計算か、とか。最終的には人によるという結論になるかもですが。

*6:その研究室に昔からずっと通ってました、みたいな人は別です。