【院試体験談④】生物系が数理情報系に挑んだ話:試験当日

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前回までで入試対策絡みは書き終わったので、試験当日とその後を書きます。夏院試のお話は今回で一通り完結です。

 

 

数学の筆記試験(8月5日)

本郷キャンパスで13時より試験開始。コロナ禍で長らく対面の筆記試験とは無縁の生活だったので、当日の受験生が集う会場の雰囲気にはどことなく懐かしさを覚えました。

肝心の試験の方は手応えほぼなし。最初の線形代数は過去問とやや傾向の異なる出題に面食らい、冷静になればもう少しペンが進みそうな問題も焦って途中までしかできませんでした。続く微分積分も微妙な感触。最後の確率統計で少し持ち堪えたかな……という感触です。しれっと高校同期が同じ会場で受験していたので、休憩時間に駄弁って気分転換しつつ何とか乗り切りました。

後味の悪い筆記試験となりましたが、ここで落ちることが確定するわけではありません。その日の試験終了直後から、口頭試問対策(離散数学・最適化)にモードを切り替えて図書館籠り再開です。以前も書きましたが、不合格だとしても純粋に良い勉強の機会になるだろうという考えでやっていたのでこの辺はあまり気にせずに済んだのかなと思います。

 

口述試験(8月24日)

Zoomでオンライン受験です。最低限見せられない荷物には布団をかぶせ部屋を片付けて、TOEFLの時とほぼ同じ受験環境を整えました。

事前に紙とペンが必要だと告知されていました。その場で紙とペンを使って解ける問題としてどのようなものが出題されるのか、相変わらず見当が付きません。「数理情報学の専門知識に関する」問題に関してはもうお祈りする他ないので、提出したレポート課題に関する問題に備えて試験ルーム入室直前までレポートを見返していました。レポート作成時にある程度「ここ突っ込んでくれたら嬉しい」という余白は残していましたが、果たしてそれが刺さるのか*1

16時頃、試験ルームへ招待されます。そこには数理情報学専攻の先生方が6〜7人、対してこちらは私1人圧迫面接とまでは言いませんが、この構図だけでも半端ない圧を感じる……!

実際に口述試験と担当したのはそのうち4人の先生でした。まずは第1志望研究室の先生から、レポート課題で書いた志望研究内容の背景と展望の部分を聞かれました。正直緊張感で大分テンパっていたのでどこまで正確に伝わったか定かではありませんが、自己評価としては「最低限言えることは言えた」ぐらいのラインです。レポート上のある数式の導出について質問されましたが、実はその数式に誤りがありました。それをその場で気付いて訂正できましたが、これが吉となったか凶となったか分かりません。

レポートの後半、少子高齢化に関する記述で次の先生に替わりました。こちらは記述した数理モデルのリミテーションとその拡張可能性に関する質問が主だったので割かし答えやすく、それなりに受け答えできたかなと思います。

続いて未知数だった「数理情報学の専門知識に関する」質問。1人目の先生は力学系に関する出題でした。力学系は前年に集中的に手をつけていた時期があったので大分気が楽になり、解きながら頭の中でその時期にタイムスリップして当時の記憶を呼び起こしていました。

2人目の先生がラストで、確率論における大数の弱法則・強法則絡みの質問でした。お恥ずかしい話ですが、正直その辺の基本定理をきちんとケアしていませんでした……。「そこ聞かれるんかーい」と心の中で叫びつつ、何となく聞き齧っていたことを基に話を組み立てて何とかしました。いや、多分何とかなってないです。

 

今振り返ると、ここで出題された力学系理論と確率論はいずれも数理と生物の狭間にある領域で特に重要視される数理的枠組みだと思われます*2。なので私がレポートで書いた内容を基に、これらの出題内容が私宛にカスタマイズされたという可能性もありそうです。

 

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前のページに戻る [:contents] 結果発表 口述試験も苦い思いを残して終わり、終了後すぐに自宅のある本郷から駒込まで、気晴らしにひたすら自転車を走らせました。2日後の生物科学専攻の口述試験対策がノータッチだったので、結局すぐに本郷に戻り生命科学の教科書を開くことになりましたが…… 生物科学専攻の試験も終わって夏院試に一区切りが付き、少しの間帰省。その後東京に戻って寂しさから知人たちとオン・オフラインで会う約束をしている最中、9月6日の15時頃に結果発表でした。こんな感じで感情がそこそこ揺らぐ夏院試でしたが、曲がりなりにも受かったことは純粋に嬉しかったです。 夏院試総括 今回の院試体験談の冒頭で、 学部からその分野を専門にしていた人々と競争する必要がありそう という不安に言及しました。この不安は少なからず、この夏院試期間中を通して常に私の身に纏わりついていたものです。実際口述試験なんかは特に、筆記試験ほど手応えの分かりやすいものでもなく、他の受験者のバックグラウンドや出来不出来も今ひとつ分かりません。何となく計数工学科からの内部進学者たちはきっと手強いだろうなーと懸念することが関の山でした。 また、 入試で何を聞かれるのか詳細がいまいち分からない というのも、試験の蓋を開けてみるまでずっと気がかりでした。対策の成果はというと、TOEFLの英単語対策も共通筆記数学対策も十全に生かされたとは言い難く、離散数学・最適化に関しては口述試験で出題されることはありませんでした。むしろその前にやっていた力学系の方が結果的に生きたので、得られる教訓の一つとして「日頃からの積み重ねが大事」みたいな当たり前のことは言えるかもしれません。 実は数理情報自体に受かったものの、配属研究室は第1希望ではありませんでした。それがこの後の大学院進学先決定に絡む一悶着につながるのですが……その辺についてはまた機会があれば記事にします。 しかしこれまでにも述べたように、上述のような不安を感じつつも同時に勉強のチャンスとして前向きに捉えていた節が多分にあり、院試を通して学部レベルの知識を叩き直した経験は学部生活の総決算として納得感の高いものだったと感じます。この経験は数理をもっと深めようという覚悟を持つきっかけにもなりましたし、ここで地力を鍛えたからこそより高度な数理に挑めるようになったと言っても過言ではないかもしれません。 アドバイスと呼べるかも分からない浅い精神論ですが、院試も大学入試と同様に最後は心の持ちようみたいなところがある気がします。その意味で「学部からその分野を専門にしていた人々と競争する必要がありそう」だとしても、「入試で何を聞かれるのか詳細がいまいち分からない」としても、最低限自分が出来そうなことをダメ元でやってみるというのは悪い心掛けではないのかもしれません。 以上で終わりです。長かった割にあまり実のあることは書けませんでしたが、最後まで読んでいただけたのであれば大変嬉しい限りです。今後も色々と記事を書いていく予定ですので、何卒よろしくお願いいたします。 まとめページに戻る 。

*1:刺さりませんでした

*2:なので今はこの苦い院試体験を噛みしめつつ確率論に取り組んでいます。